でもワザとです by犬神情次2号

本番中の心構え

 さあ、いよいよライブ本番だ!練習の成果を友達や家族や対バンのメンバー、それから自分たちのことを知らない対バンのお客さんに観ていただくんだ!そして褒められたいんだ!尊敬されたいんだ!なんだったらモテたいんだ!!
 …というような気持ちが少なからずあるはずでしょう。だって、ステージに上がるんですから。ここまでの道のりは楽しいながらもそれなりに大変だったと思うし、そのために努力もしてきたんだし、だからこそより良く見られたいだろう。今までで一番の演奏とパフォーマンスがしたいと思うのは当然だと思う。

 だが、無理だ!無理なんだよ!

 断言するが、よほどの特殊なメンタルを持った人でない限り、あるいは奇跡でも起こらない限り、本番で練習よりも良い演奏なんかできないよ!僕は犬神サアカス團のギタリストとして23年くらいライブを続けてきてるけど、個人練習やスタジオリハーサルよりもライブの方が良い演奏ができたと実感できたことなんて、ほとんどないね。下手したら1度もなかったかもしれない。
 それは何故か。単純な話で、ライブ本番の環境が普段練習してる環境とは全然違うからだ。音の聞こえ方が違うのはもちろん、視界も違う。一番違うのはお客さんが観ているということだ。これによって最初に書いたような欲が出てくる。つまり気持ちが違う。感情が違う。ステージ上は照明によって暑いことが多いから汗もかく。そうすると汗で滑って演奏の感覚もいつもとは違ってしまう。ざっと考えただけでも練習と本番ではこれだけの違いがある。
 平常心でなんてできるわけないんだ。我々くらいのキャリアを誇っても、流石に昔ほどではないけど毎回緊張もするし、力みもする。それが初ライブともなれば心臓が飛び出るくらい緊張するだろう。手や足が震えるかもしれない。楽屋で嗚咽が止まらないかもしれない。でも時間がくれば幕は開いてしまうんだ!
 緊張感を持つことは悪いことではないけど、過度な緊張はやはりライブに悪影響を及ぼすしてしまう。緊張し過ぎないためにはどうしたらいいか。そして、より良いライブにするためにはどういう心持ちでいればいいのかを考えてみよう。

<事前の準備をしっかりと>
 極力不安が残らないように可能な限りの準備・練習をしておくんだ。そして、いかに多くの「楽勝」と思える部分を作れるかが重要だ。「この曲は楽勝」「あのフレーズは余裕」っていう、何も考えなくても弾ける叩ける歌える曲やフレーズが多ければ多いほど、緊張はやわらぐし本番も上手くいくゾ!

<そして諦めよう>
 「諦める」というのは、決して手を抜いていい加減に演奏すればいいってことじゃないよ。当然のことながら、いつも通り上手に演奏しようという気持ちでいることは大事。だけど、前述の通り、やってきたこと以上のパフォーマンスができるわけないんだ。そこは諦めよう。「本番で120%の演奏ができれば…」なんていう淡い期待は捨てよう。「できることをやればいい」という心持ちでいることが、より良いパフォーマンスに繋がるんだ!

<ミスを恐れるな!>
 どうしても本番直前や演奏中はミスを恐れて緊張する。なるべくミスをなくすよう準備をしておくべきだが、どんなに練習してもミスは起こるよ人間だもの。だから、本番直前~本番中に限っては「ミスは必ず起こる」と腹をくくろう。ここでも「諦める」んだ。恐れて緊張して萎縮した演奏をしたらさらにミスを起こす可能性は高まってしまうよ。だからミスを恐れずおもいっきりのびのびとパフォーマンスしよう!

<お客さんを楽しませろ!>
 ライブの目的は良い演奏をすることじゃない。お客さんを楽しませることだ!ジャンルによって様々だが、多くの場合良い演奏は、お客さんを楽しませるための手段でしかないんだ。極端に言えば、ミスをしたってお客さんが楽しんでくれてればOKだ。だから常にお客さんを楽しませることを一番に考えよう!

 本番を良い精神状態で迎えるためには、事前の準備が大事だ!準備さえ怠ってなければ、その段階でもうお客さんに「いいところ」を見せられる保証は得られてるはず。だから必要以上にいいところを見せようと意気込む必要はない。変に意気込んで、緊張して力んでしまっては何の意味もないんだから。
 そして、お客さんに楽しんでもらおうという気持ちを忘れずにいれば、仮に緊張で体が動かなくても、ミスをしてしまっても、くじけずに懸命な演奏を続けられるはず。懸命に演奏する姿は、きっとお客さんの胸を打つはずだ!

トラブルが起きた場合の対処法

 チケット代をいただいてお客さんを呼んでいる場合はもちろんだけど、そうでない場合でも、ステージに上がってライブをしている以上、極力トラブルは避けたいだろう。トラブルは、少なからずライブの進行を妨げるし、意図した演出やパフォーマンスを遮断されることになってしまうからね。
 でもどんなに事前にチェックしてたとしてもトラブルは起こる。人為的なもの、原因がすぐに分かるもの、原因不明なもの、様々なトラブルが起こる可能性がある。
 ライブ本番ではどうしても普段より力が入ってしまっているので、ギターの弦も切れやすいし、ドラムのスティックが折れてしまうこともあるだろう。
 照明の熱や観客の熱気によりアンプやエフェクターが不調になる可能性もあるし、何かにひっかかって衣装が破れたり、つまづいて転んで怪我をする可能性もある。前触れなく急に本番中に機材が寿命を迎えることだって考えられる。
 トラブルは仕方がない部分ももちろんあるんだけど、なるべく起こらないように準備をして、考えられる限りの対処法は事前に想定しておきたいね。

<防げるトラブルは未然に防げ!>
・ギターの弦をなるべくフレッシュな状態にしておく。必要ならライブ前に換えておく。
・電池を使う楽器やエフェクト等を使う場合は、本番前に電池を交換しておく。
・ドラムスティックやピックは予備を用意して、落としたり折れたりした場合すぐに使えるようにしておく。
・ベースやギターのストラップが外れないよう事前にチェックする。
・シールドは断線の恐れがあるし、使い続けると劣化するので、なるべく新しいものを使う。
・シールドやパッチケーブルや電源が抜けないよう、必要であればガムテープで固定する。
・スネアを持ち込む場合は皮の状態をチェックする。必要であればライブ前に換えておく。
・本番で着る衣装や靴は事前に身につけて可動性等をチェックしておく。
・PCを使う場合は振動や熱対策をしておく。

 等々、他にも事前にチェックできるところはあると思う。僕はギター弾きなので他のパートのことはよく分からない部分もあるが、各自トラブルを避ける努力を事前にしておこう。
 
 それでもトラブルが起こってしまうことはある。そんな場合を考えて対処法を想定しておこう。例えばケーブルが抜けてる等、すぐに原因が特定できて対処できるトラブルなら良いが、原因が分からない場合も多い。そうなると演奏が続けられなくなる。その場合どうするかをバンドメンバーと打ち合わせておくんだ。
 ギターの音が出なくなったら全員が演奏を止めるのか、それともしばらくは続けるのか、合図をしたら止めるのか。止めた場合MCをするのか、その場合何を喋るのか。また、ベースの音が出なくなったらどうするのか…等々。
 対処法を決めておくだけでやるべきことが決まるから、慌て過ぎずに済む。余裕が生まれるからより対応がしやすくなる。経験を積んでメンバー各々があうんの呼吸で対処できるようになれば、トラブルをエンタテインメントに昇華できる場合もあるだろう。

すべてはお客さんのため

 本番でより良いパフォーマンスをするためにも、トラブルに対処するためにも、結局は事前の準備が大事なんだ。それができて初めて心に余裕が生まれて「ライブを楽しむ」ことができる。それは結果的にお客さんを楽しませることにも繋がるはずだ。
 本番中はいろんな状況が訪れるし、いろんな感情に襲われるだろう。だがどんな時でも一番大事なのはお客さんを楽しませることだ!考えてきた演出もMCもセットリストも、すべてはお客さんを楽しませるためだ!事前の準備も、練習も、緊張も、ミスしたくない気持ちも、すべてはお客さんに楽しんでもらうためなんだ!
 演奏が上手でスムーズに進んでもつまらないライブはあるし、下手でもトラブルがあっても胸を打つライブもある。楽しませる気持ちを忘れず、ステージで君の生き様を見せてくれ!